2012年5月11日 (金)

昼はかく笑う(その14)

諸肌脱ぎのまま近づいてくる夜を見た雪麗が
「ちょ…っ!あんた、頼むから上羽織んなさいよ!目のやり場に困るのよ!」
袖で顔を隠しながら叫ぶように言った。
夜は初めて今の自分の姿に気づいたように、
「あ、ああ…すまねえ」
と言いながら、ずらしていた着物に袖を通した。銀色の髪が初夏の陽光に煌めいて、眩しい。まるで、総大将の美しさをそのまま写し取ったかのようで、雪麗だけでなく、珱姫もうっとり夜を眺めていた。
――やっぱり早く帰らなきゃ
昼は、思った。


その夜の食事は格別に美味だった。煮魚、刺身、焼き魚…種々雑多なご馳走が出され、昼も夜もこんな美味しい食事は初めてとばかり、夢中で食べた。昼間によく体を動かしていたせいか、お腹もすいていた。総大将も酒を片手に
「うまい、これはうまいのう」
と上機嫌で箸を進めている。夏至が近づいているこの時期は少し暑くて、総大将は右半身を露わにして手酌で浴びるように酒を飲んでいる。その姿から放たれる畏――いや、色香と言った方がいい――は半端なく、昼も夜も目のやり場に困った。鯉伴はとうに席を立ち、珱姫も雪麗も席を立って台所の方へ「退散」していた。
――本当にあれがじいちゃん…?
昼は信じられなかった。
「…おい、リクオ」
「何?」
昼夜両方が同時に返事した。
へべれけになった総大将が手招きをしている。その有無を言わさぬ雰囲気に昼がまるで吸い寄せられるように総大将の側へ行く。
「…何?(じいちゃん)」
「…お前は珱姫に似ておる…ういやつじゃ。酒を注いでくれんか」
昼を無理やり隣に座らせながら、総大将は言った。ゾクリとするような色気に昼は全身が総毛立つのを感じた。本当なら、「ふざけないでよ」の一言で一蹴できるのだが、今の自分の立場はあくまで「客人」である。祖父があれほど自慢していた「若い頃のワシ」を目の当たりにして、心のどこかでそれを側で眺めていたい気もしないでもない。
「ボ…ボク飲めないんですけど」
「注いでくれるだけでええ」
その声もまた仰け反りそうなほど艶っぽい。
――なんなんだ?このぬらりひょんって妖は…?
祖父をよく見知っている昼でさえ、この「若い頃のワシ」には骨抜きにされてしまいそうであった。

「妖様…このままでは風邪を引きますよ」
酔いつぶれて眠ってしまった総大将に珱姫が優しく声をかけている。
――じじい…
その場で布団をかけてもらう総大将を夜は、襷かけの姿で遠くから眺めていた。

2012年5月10日 (木)

昼はかく笑う(その13)

きっと、冬の熾火のような、眩しすぎない、ほのかな暖かさを持つこの少年の内面からにじみ出てくる何かがそうさせているのに違いない。父が持つ強さや優しさとは違う――そう、母の珱姫とどこか似ている優しさ。弱々しいようで、決してそうではない。そういう母
――鯉伴にとって、母はかなり特別な人間だった――
によく似た強さを持つ人間は、ある意味鯉伴には有り得ない存在なのだ。だから認めたくなくて、これという嫌う理由もないのに見る度に腹が立った。今日魚河岸に誘ったのも、少し困らせてやろうというよこしまな気持ちもあった。だが、この母にそっくりの人間は、そんな鯉伴の思いを知ってか知らずか、肩で息をしながら必死についてくる。
――敵わねえな
人気のない場所まで来ると、鯉伴は口笛を吹いて蛇ニョロを呼んだ。
「…これに乗りな。魚が傷んじまう」
鯉伴は、ほとんど倒れそうなリクオに言った。
「…え!?いいの!?本当に」
明らかに「助かった」という表情を浮かべて、リクオは言った。


鯉伴とリクオと、かごいっぱいの魚を乗せて、蛇ニョロはゆうゆうと江戸の空を飛んでゆく。太陽が近くて、眩しい。上空なので、やや風もきつい。
「おと…鯉伴くん、有り難う。とってもいい気持ち!」
「…しっかり捕まってろ。落っこちても知らねえぞ」
「…やっぱり鯉伴くんは優しいんだね」
「な…っ!」
鯉伴は顔を真っ赤にして言った。
「あのままじゃあ、魚が痛んじまうからな。もう一度魚河岸に行かされたくねえし」
「…ツンデレだな、鯉伴くんは」
鯉伴が最も苦手な笑顔でリクオは笑う。
――つんでれ?
「…何だ、それ?」
「あ、あの…」
微かに畏を放つ鯉伴を前に、
――やっぱり似てるなあ…
リクオはしんみりそう思いながら、目の前の鯉伴にどう説明すべきか、頭の中をフル回転させていた。


奴良家の台所では、雪麗達が待っていた。その間に夜は薪割りの仕事をさせられていたらしく、諸肌脱ぎになって、台所の上がり框に座って休憩していた。
「お帰り。鯉伴。ご苦労様」
雪麗が鯉伴達を労う。
帰って来た鯉伴達を見て、夜が立ち上がり、リクオの側へ行こうとすると、蛇ニョロから飛び降りた鯉伴が抱きついてきた。
「早かったな、鯉伴」
「蛇ニョロに乗せてもらったからね」
その後ろで、リクオが雪麗達に魚が一杯入ったかごを渡している。
「おっ…昼。大丈夫か?」
夜が諸肌脱ぎのままリクオの方へ行く。鯉伴がその後に続いた。

2012年4月16日 (月)

ぬらりひょんの孫第百九十八幕「ゆらとリクオ」

ぬらりひょんの孫第百九十八幕「ゆらとリクオ」
玉章VS長親 あっさり決着 術者その術に溺れる…か?玉章は相変わらず怜悧で切れ者 冷たく笑うその内には未だに野心がふつふつと…3P目の1コマ目色気全開なんですけどっ!!


昼ゆらに胸きゅんきゅんきゅん~~~!!そもそも京都戦直後に秋房に昼若が会った時もお付き合い前提「ご挨拶」みたいやったもんな~♪うひょおおおお 色気攻めする夜若の手を素っ気なく払いのけ、「キザったらしいしゃべり方ー!!」とドン引きするゆらちゃん可愛いよ 可愛すぎる その素っ気なさが夜若にはめっちゃ新鮮やと思う 昼若花開院婿入り推奨ーー!!


式神三体融合術 変化したゆらちゃんが素敵すぎて2424♪十三代目も久しぶりに登場して、これまた2424♪体に負担がかかる術と聞いて、ゆらちゃんのことが心配なんやけど ロン毛陰陽師・ゆらちゃんの神獣奉弓に夜若もハート射抜かれた!?以下次号!


今週はりくゆらで萌えたぎりました…リクつらファンの皆様ごめんなさい

2012年4月 9日 (月)

昼はかく笑う(その12)

日本橋界隈は相変わらずの盛況ぶりだ。人、人、人…魚河岸は日本橋のたもとにある。日本橋川には荷船、客船が多数上下している。川に面して、簡素な作りだが、魚問屋の建物がずらっと並んでいる。この時代だから、江戸湾で取れた魚直送のため、生きがいい鮮魚が豊富にある。鯉伴は、雪麗から頼まれたらしい魚を物色している。鯉伴は適当に何種類か選ぶと代金を払い、背負ってきたかごに入れ始めた。無論昼も同様にかごを背負わされてきている。しめてもらっているが、鮮魚だから足が早い。鯉伴は昼に
「悪ぃな、重いだろ…?うちは食べる口がたくさんいるからな…でも、ここの魚が一番うまいんだ。イキもいいし。さ、さっさと帰るぜ」
そう言うと昼の前に立って歩き始めた。
確かに重い。おまけにしめてもらってはいるが、時々かごの中でピチピチとはねる。今の鯉伴は昼とあまり背丈は変わらないが、背中で魚がはねようがどうしようが、ものともせず歩いている。荷が生物なので、鯉伴は早足で歩く。昼は息が上がる。
――情けないなあ…
肩で息をしながら昼は思う。前を行く鯉伴は息一つ乱さず歩いているというのに。鯉伴の後ろ姿を見ていると、ふと記憶の底にある父の後ろ姿が重なった。
――お父さん…
「おい、大丈夫か」
鯉伴が振り向いて声をかけてくれる。
「うん…大丈夫だよ。ごめんね。鯉伴くん」
「…人間はやっぱり弱いんだろうか」
突然鯉伴が言った。
「…鯉伴くん…?」
少し歩く速度を落として鯉伴が昼に話しかけてきた。
「…あんたたちが来た時、思ったんだ。人間のリクオと妖のリクオ…やっぱり人間の方が弱いんかな…って」
「違う、違うよ!ボクはただ鍛え方が足らないんだ。前にいたところは便利なものがたくさんあって、そんなに体使わなくてもよかったから、かなりなまってるんだ。ごめんね」
昼は肩で息をしながらも柔らかく笑いながら言った。
「…知っての通り、おれは半分人間だから、みんなに助けてもらわなきゃいけねえんだ」
いつの間にか歩く速度がかなり遅くなっている。
「…この夏が始まる頃が来ると…いつも思い知らされるんだ…親父みたいになりたいのに…。でも、おれには人の血も流れてるから…」
「…何を言ってるの?鯉伴くん…」
急に気弱なことを言い始めた鯉伴に昼は困惑を隠せない。
「…親父みたいになりたい…親父みたいな天下無双の妖に…」
鯉伴自身も、なぜ自分が昼にこんなことを話す気になったのかわからなくなっていた。

2012年4月 4日 (水)

昼はかく笑う(その11)

「………」
昼は答えない。ただ黙って夜の胸に顔を乗せて幸せそうに目をつぶっている。
「…聞こえる…」
「…何が?」
「…夜の心臓の音」
夜は昼の髪を愛おしそうに撫でている。
「…前も言ったが…お前はおれだ。そしてお前はおれの光…おれ達闇の化生が決して持てない光だ。お前の心が折れた時、ずっと守っていこうと決めた。お前なしでは生きていけない…」
「ボクは…君だよ。君はボクの本音だ…ボク達はお互いがいなければ生きていけない…」
夜は昼の背中に腕を回し、静かに抱きしめた。
「…お前はおれが守っていく…だから安心しろ。お前の闇も全部引き受けてやる」
「うん…」
二人はお互いに見つめ合い、ゆっくり唇を重ねた。


朝、夜が起きると、昼は先に起きて台所を手伝っていた。夜明けが早い今は雪麗達はかなり早くから朝餉の支度にかかっている。心優しい昼は祖母・珱姫や雪麗達にいつも感謝していた。昼間は明るく振る舞っているが、日が落ちてからは夜に甘えることが多くなった。
――江戸は闇が深い…
夜昼がいた平成の世に比べると、である。おまけに今暮らしているのが妖怪屋敷だ。昨夜、人間であるはずの昼が妖気を帯びたのもそのせいではないかと夜は考えた。昼の中のほんの僅かな妖の血が知らず知らずのうちに闇を引き寄せているのではないか。
――何とか、帰らなきゃならねえな。自分達がいるべき場所へ…
夜がそんなことを考えていると、白い割烹着を着た昼が膳を運んできた。昼が甲斐甲斐しく働く姿は見ていて愛おしい。
そんな夜の隣にいつの間にか鯉伴が座って、
「おはよう!」
と声をかけてきた。
「おはよう、鯉伴。ん…?」
「?」
「鯉伴、お前…いつもと違う…」
気のせいか、髪が少し短い。鯉伴独特の妖気が少し弱くなっているようだ。
「…おれ、今人間の血の方が強くなってんだ」
横から珱姫が
「夏至の頃になると、毎年こうなるのよ。昼の時間の方が長くなるからかしら」
――なるほど
夜は思った。たとえ妖でも自然の力の影響から逃れられるはずはない。夜は、鯉伴が昼にあまり近寄ろうとしないわけが何となくわかったような気がした。


朝の用事が一段落した頃、鯉伴が珍しく昼に魚河岸まで一緒に行こうと声をかけた。雪麗達に買い物を頼まれたらしい。
「いいよ」
昼の笑顔に鯉伴は少し困惑した。それはいかにも元気な人間の少年らしくて、眩しい。実は鯉伴はこの昼の笑顔が少し、いやかなり苦手だったのだ。

2012年4月 1日 (日)

昼はかく笑う(その10)

「捕まえるんだよ、こーやって手を握って」
鯉伴はその小さな手を差し出して、昼の手をきゅっと握った。昼もその瞬間とくんと心臓が音をたてた。
――お父さん…
昼は胸の高まりを抑えかねて、暫く下を向いていた。そんな昼の想いとは裏腹に、鯉伴はすぐに鬼ごっこを始めてしまった。今度は鯉伴は畏を使わずに、普通に自分の足で駆けて逃げた。それがまた凄まじく早い。
「おれぁこの辺の人間仲間に韋駄天って呼ばれてんだ」
その日夕方近くまで鯉伴につき合わされた昼と夜は夕飯の頃にはヘトヘトになっていた。


幼い鯉伴達と過ごす平和な日々はどんどん過ぎて行った。昼も夜もいつの間にか江戸の生活に馴染み、物は豊かではないが、慎ましく暮らす日々を楽しむようになっていた。
「ねえ、夜…」
江戸時代は日の出と共に一日が始まり、日の入りと共に一日を終える。夜は江戸時代へ来てから、そののんびりした生活リズムにどっぷり浸かり、出入りがなければ昼と床を共にすることが多かった。
「ん…?」
久しぶりに肌を重ねた夜、昼が何気なく言った。
「…ボクたち…いつ帰ろう…?帰れるよね、夜…」
昼の髪に触れながら夜は
「帰れるさ。だがな…」
「?」
「おれは…ここの暮らしが気に入ってる…帰るとなると寂しいな」
何気に呟いた夜の言葉が昼には少しショックだった。
「…ボクがいるのに…!!そりゃ、夜はお父さんのお気に入りだから…いいよね」
「…!?どうしたんだ昼…」
夜は昼の髪に触るのをやめた。
「…ボクは…ボクは人間だから…夜にはわからないんだよ…ボクの気持ちなんか…」
夜にはさっぱりわけがわからなかった。なぜ急にこんな痴話喧嘩が始まったのだ。
「やめろ…昼。もうみんな休んでいる」
「…ボクは…帰るからね。帰りたいんだよ…!」
突然取り乱し始めた昼に夜は激しく動揺した。
「しっ…!落ち着け、昼、落ち着けったら!」
それでも何かを言おうとする昼の唇を夜は慌ててふさいだ。
「ん……」
「…帰りたいか」
唇を離すと夜は昼に問い直した。
「……」
昼はゆっくり頷いた。そしてそのまま夜を押し倒すと、子猫のようにむしゃぶりついてくる。暗がりの中なのに、その目と表情が淫靡と言ってもよいほどに妖艶なのがわかる。昼のあまりの変身ぶりに夜は背筋に寒いものが走るのを感じつつも、抗うことができなかった。寧ろ体は勝手に動いた。
「…何…?夜…」
「…お前こそ、どうしたんだ、今日は…いつもより激しいぞ」

昼はかく笑う(その9)

「あんたは…何となくよう姫に…似てるわね」
雪麗のこの言葉に昼はドキッとした。確かによう姫は昼夜の祖母だ。初めて会えて、実は昼は「おばあちゃん」と呼びたくて仕方がないのだが、今のよう姫の年齢からしても、この状況にしても、とても呼べそうにない。
「…ひきかえ」
雪麗は手早く片づけながら、口だけは動いている。
「あの子は…似てるわね。うり二つだわ」
雪麗は、少し頬を上気させながら言った。
「…ねえ、あんた達元は同じって本当なの!?」
雪麗は、真っ正面から昼を見据えつつ尋ねた。そんな雪麗を見て、
――罪作りなじいちゃん…
昼は半ば呆れながら思った。
「あらあら、昼リクオさん、手伝って下さってるのね。ごめんなさい」
たすき掛けのよう姫が台所に入ってきた。
「ここのどこがいいんだか…みんな寄ってくるのよねぇ…いつの間にか大所帯だわ」
嫌みとも取れる言葉だが、雪麗はそう言いながら誇らし気だ。恋敵であるはずのよう姫と共に奴良組の底辺を支えている彼女がいるからこそ、今この組はうまく回っているのだと昼も思った。
――あれ?夜…どこにいるんだろう
夜はどうやら、鯉伴とともに庭で総大将じきじきに畏のいろはを伝授されているようであった。


「お前、なかなかの腕じゃ…鯉伴、お前にもいい遊び相手ができたのう。ワシも楽しみができた」
総大将のこの言葉に夜の胸中は複雑だった。
――おれは親父の遊び相手か
確かに妖としてはまだまだだが、それなりに修行も積んできたつもりだったのが頭から否定されたようで、腹が立った。そんな夜の胸中を知ってか知らずか、鯉伴が無邪気に夜の腕にぶら下がってくる。
「ねえ、遊ぼう」
「またかくれんぼか」
「…鬼ごっこ」
「?」
「…こーやって」
鯉伴の小さな手が夜の手をきゅっと握った。とくんと夜の心臓が音を立てた。
「手を握った方の勝ち」
そう言った鯉伴の姿は既に夜の前から消えている。ぬらりひょんの畏の基本、鏡花水月だ。姿はあれど、実体はない。鯉伴はまだ10歳そこそこのようだが、既に身に着けている。
――さすがは親父だぜ
夜と鯉伴が見た目には不思議な鬼ごっこをしているのを昼は庭に面した縁側に座って眺めていた。傍目には、夜と鯉伴は仲のいい兄弟のように見える。鯉伴は、昼が眺めているのに気づき、言った。
「お前も入るか」
「ボ…ボク!?」
妖同士のばかし合いにどうやって混ざれというのだ。
「いいじゃねえか、昼」
夜が言った。

2012年3月28日 (水)

弥生の野に出し君(鯉黒) R15 閲覧注意

春が近づいている。まだ桜は咲いていないが、風がかぐわしく、冬のそれとは全然違う。どこからか、沈丁花の香りも漂ってくる。黒田坊は一人庭の池のほとりに腰を下ろし、空を見上げた。
――もう、刃のような青ではない
錫杖を体の傍らに置き、今度は仰向けになって空を見上げた。こんな時あの人なら、きっと真上から顔を覗かせ、黒田坊の邪魔をするだろう。
「黒じゃないか。今日はいい天気だなあ」
河童が池の中から顔を出して声をかけてくる。何もかも平和で、庭の草花すらも愛おしい午後―――


「黒。寝ちまったらだめだろう」
誰かの手が両頬に触れた。優しく、大きな手の感触には覚えがあった。
「鯉伴様…!?」
体を起こそうとする黒田坊に
「しっ…」
小さな声で囁いて、鯉伴が唇を重ねてきた。鯉伴の吐息が入ってくる。舌を絡め合いながら、貪るように激しいキスを交わす。
――河童が見ているかも知れない
黒田坊は慌てて唇を離そうとするが、鯉伴はそれを許さない。やがて鯉伴の手が黒田坊の袈裟を肩から外し、襟元から中へ入ってきた。優しくなぞるように胸のあたりを愛撫する。黒田坊の吐息と心臓の鼓動が速くなる。襟元を割られ、鯉伴が顔を胸にうずめた時、やっと黒田坊は小さな喘ぎ声を漏らした。鯉伴の顔と手はゆっくりと下の方へ向かっている。
「り…」
「相変わらずだな…お前の熱いのをおれにくれよ…」

鯉伴の動きに合わせ、黒田坊の長い美しい黒髪が乱れる。
「まだ…だめだ…」
「…そうかい。久しぶりのお前の身体だ。少しずつ楽しませてもらうぜ…」
鯉伴の甘い声に黒田坊の身体にも火がついた。日の高いうちから何をしているのだというたわけた考えはこの瞬間に消えてしまった。
「…私もあなたには随分会っていない…見せて下さい。あなたを」
黒田坊は鯉伴の首に手を絡ませ、乱暴に着物を襟元からはだけさせた。忘れ得ない愛おしい肉体が目の前に現れた。黒田坊も自身の熱を抑え切れなくなっている。
「鯉伴様…!」
貪るように鯉伴の体を唇で愛撫する。
「…変わらねえな、お前は…その淫らな…唇…。……!」
黒田坊の唇が鯉伴の熱を捕らえていた。「黒…お前…たまらねえ…」
「鯉伴様…!」
「…くれてやる…お前になら…全部…」

ゴオッという春の風に黒田坊は我に返った。
――あれは夢だったのか…
夢にしてはあまりに残酷過ぎる。愛しい人の吐息、声…。黒田坊が胸に秘めた想いと涙は春の風が優しく包み込んだ。

2012年3月27日 (火)

今日はありがとう

短大時代の友人と久しぶりに会いました。彼女達とは何と15年以上会っていませんでした。短大を卒業して30年も経ち、みんなそれぞれの人生を歩んで来ています。いいことも悪いことも、みんな抱えて生きてきてます。今日の私はドジなことに待ち合わせの駅をふた駅間違えて降りてしまい、友人二人を長時間待たせる羽目になってしまいました。ごめんなさい。謝る私に「喋りながら待っていたから、大丈夫」と私のドジを笑って許してくれた友人にほんま感謝です。二人のうち、一人は結婚してから旦那さんの転勤のために日本をあちこちまわり、色々大変やったでしょう。子どもさんたちの手も離れ、やっと自分の時間が持てるようになったと言うてました。自分の時間が持てるようになった分、寂しいとも。子育てはほんまあっという間です。ややこしいけど、小さくて、無条件に自分を慕ってくれる幼子と過ごせるゴールデンエイジは束の間。今正にこの幸せな時間の中におられる若い方には今を大切にして頂きたいと思います。


もう一人の友人は独身です。いい子なんだけどなー。彼女のことも色々心配です。私らの年代はきょうだいも少なく、家族に何かあれば肩にかかる責任の重さは半端じゃありません。子育てもですが、親のことも一人でできることではない。家族もきょうだいも多かった時代と同じようにできるわけがないのです。社会環境がこれだけ変わっているのだから、社会全体で意識も変えなきゃと思うのですが、ローマは一日にしてならず。私の子ども達が老年期を迎える頃にはかなり意識改革も進んでいるかしら。色々呟いてしまいましたが、全ての生きとし生けるものが幸せでありますように。友人達もずっと元気で幸せでありますように。あなた達に幸多かれ。そう願わずにはいられません。みんな、ありがとう。また会う日まで。

2012年3月26日 (月)

朝まだ来、若い者は 夜昼 R15 閲覧注意

「ふふっ」
昼リクオは、朝目を覚ました途端祖父の言葉を思い出して笑った。
――ワシは強くてカッコよくて魅力的なんじゃからな
祖父の背中についてきている無双のつわものどもを昼は知っている。
祖父が若い頃だれだけカッコよかったか、昼は知らないが、牛鬼や狒々、鴉天狗達を見ていればある程度想像がつくというものだ。
そんな昼を横で眠っていた夜が不機嫌な顔で見ている。
「なァに朝からニヤケてんだ。頬まで染めて」
夜はつっけんどんに訊いた。とにかく面白くない。
「じいちゃんが…かっこよかったんだよ、夜…」
「へーへー、そうかい」
「いけない、ボクもう起きなきゃ」
時計はもう7時を指している。布団から出ようとする昼の手首を夜が掴んだ。
「…待てよ。俺はまだ眠い。付き合えよ」
「ちょ…っ!夜、もう起きなきゃ!」
起きようとする昼を夜は無理やり組み敷いた。
「何をするの?夜…」
「…お前、今じじいのこと考えて頬を染めてたろ」
「えっ…?知らない」
「…知らばっくれんな」
そう言いながら、夜はいきなり昼にキスしてきた。
「よ、夜っ…」
「…お前は俺だけを見ていろ」
夜は荒々しく、昼の夜具を脱がそうとする。
「…見てるよ。ボクはキミだけを」
「じじいのことを考えてトロンとしてた」
「してない」
朝の寝起きは意外に神経がピンク色だ。夜は昼を組み敷いたまま、首筋、鎖骨、そして胸、下腹部へと唇を移動させていく。相変わらず昼は声をあげない。そんな昼だから夜は余計に攻めたくなってしまう。
「夜…が好…き」
裾を開かされた昼が吐息混じりに聞き取れないほどの小さな声で言う。
夜は我に返り、愛撫するのをやめた。強く掴んでいた手首を離し、
「すまん、昼…」
夜はポツリと漏らす。
「…いいんだ」
昼はにっこり笑って言う。
実はこうして夜に愛されるのを昼は決して嫌ではなかった。

おしまい


これじゃ、ただの腹黒昼若じゃないかーーwwwwww

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